2016年東京都知事選挙に関する選挙区可視化分析

2016年東京都知事選挙に関する選挙区可視化分析

選挙コンサルティングを行うジャッグジャパン株式会社(東京都渋谷区、代表取締役 大濱崎卓真)は、平成28年8月1日午前9時、当社研究機関「投票行動分析フォーラム」で実施した、2016年東京都知事選挙(平成28年7月31日施行)の分析結果を発表いたしました。

分析は、東京都選挙管理委員会が発表した選挙結果(投票結果ならびに開票結果、いずれも8月1日未明の確定分)を、地理情報システム(GIS)を用いて可視化した上で、選挙戦での街頭演説場所ならびに個人演説会の会場をプロットし、最後に当社選挙プランナーが解釈を行ったものです。

本日の発表は、主要3候補の勝因を可視化されたデータをもとに分析した「速報」であり、今後さらなる研究などを行う予定です。今後も投票行動分析フォーラムでは、選挙結果から投票行動を分析し、有権者の政策決定や投票行動決定プロセスを研究し、事例などを通じて発表していきます。

調査結果の趣旨

主要3候補に関する分析の解釈(概要)

【小池候補】
小池候補は、都心3区での得票率がいずれも高く、全体に対する割合がほぼ50%に届く勢いであったことから、無党派層を中心にバンドワゴン効果が発揮されたと言えるでしょう。このほか、前衆議院議員としての地元である東京都第10区の構成自治体である豊島区や練馬区でも高い得票率を記録したことから、地元出身の都知事を押し上げようという効果もあったことは明白です。
小池候補は、23区より市部での得票率が下がりましたが、これは増田候補が多摩を重点的に回ったことに対しての運動量が必ずしも多くなかったことを指し示していると考えられるほか、浮動票層の割合が23区よりも少ないことが考えられます。しかしながら、最終的な得票率は増田候補の約1.5倍となったことから、多摩での差が得票率全体に与える影響は全体のうち僅かだったと捉えることもできるでしょう。市部では西武線沿線では比較的得票率が悪かったのに対し、武蔵野市や三鷹市など区部に近い地域では得票率が高くなる傾向がありました。中央線を意識した演説場所の選定などが理由に挙げられると考えます。
小池候補は三宅島での演説も行いましたが、島しょ部では一部地域で増田候補に逆転を許すなど、強さを発揮できませんでした。島しょ部は農業の問題や交通の問題などを抱えていることから、与党候補に入れる傾向が強いとされることが影響を受けた理由とみられます。

【増田候補】
増田候補は、23区平均で26.88%の得票率となりました。23区内では、足立区、葛飾区、江戸川区など、城東地域で比較的得票率が高い結果となりましたが、これは旧来から自民党の結束力が強いと呼ばれる下町地域では、自民党・公明党の引き締めが効果を発揮したと言えるでしょう。墨田区・江東区でも平均より高い得票率を獲得したのも、同様の理由と言えます。
23区よりも市部での得票率が高かったのも特徴と言えるでしょう。八王子市、立川市、福生市、武蔵村山市などでは得票率が30%を超えたことから、多摩重視のアピールが効果を現したといえるでしょう。武蔵野市や三鷹市は得票率が25%近くと伸び悩みましたが、これらの市は「多摩」という認識がそこまで強くなく、23区との結びつきが強いのも伸び悩みの理由です。調布市、小金井市などの伸び悩みも同様の理由か、もしくは中央線沿線を集中的に回った小池候補の影響を受けたものと考えられます。
増田候補は島しょ部では小池候補に肉薄する戦いとなりました。大島支庁、三宅支庁管内ではいずれも小池候補を上回ったのは、農業対策や交通インフラ対策に強い与党推薦候補であったことが理由とみられます。

【鳥越候補】
鳥越候補は、23区平均で19.53%の得票率となりました。23区では、革新系が強いとされる杉並区、今回応援演説にも複数回入った長妻昭衆議院議員の地盤でもある渋谷区、中野区、23区区長で唯一鳥越候補を支援した保坂区長の世田谷区などが得票率20%を超える結果となったことから、野党が一定の固定票を持つ地域ではしっかりと得票を得ることができたと言えるでしょう。
鳥越候補も23区より市部での得票率が高かった結果となっていますが、このうち小金井市、国立市などでは増田候補と肉薄する結果となったのは、それぞれの自治体が、旧来野党が強い自治体であることの影響を受けていることが言えると思います。また、武蔵野市や府中市は応援演説に入った菅直人元首相の地盤(選出選挙区)でもあり、三鷹市も以前は同選挙区だったことから、反原発などを主張した鳥越候補の政策を重視した有権者の投票行動に影響を与えた可能性が高く、結果として得票率が高い結果になったと言えるでしょう。
選挙戦終盤には大島で街頭演説を行ったことも注目を集めましたが、大島町で25%を超える得票率を上げたことは特筆すべきものの、その他の島しょ部では得票が伸び悩む結果となりました。従来の野党が持つ票のポテンシャルは超えられなかったとみられます。

調査結果(地図)
2016東京都知事選挙(投票率・主要3候補者得票割合) – ArcGIS Online形式 http://bit.ly/20160731tokyo
プレスリリース – PDF形式 http://voteforum.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/20160801-release.pdf
小池候補(市区町村別得票率)
小池候補(市区町村別得票率)
増田候補(市区町村別得票率)
増田候補(市区町村別得票率)
鳥越候補(市区町村別得票率)
鳥越候補(市区町村別得票率)
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